骨葬(こつそう)

その人はずっと施設にいた。昨年から病院に入院していた。もうあんまりよくないからと聞いていた。
ある日電話があって、病院で亡くなったから、明日、簡単にといってはなんたけど、お参りしてほしい。もうお墓にもいれてしまいたい。ということだった。
すっかり無人になって久しいその家に呼ばれたのはお昼過ぎで、行ってすぐに法名をつけ、マッキー(しかなかった)で半紙に書いた。出席者は依頼者である二男夫婦と親戚のおばちゃんが二人。
お焼香のためのお盆を用意してもらう。
まずお内仏に向かって阿弥陀経をあげた、となりの床の間に経卓を置いてそこにお骨と花などの三具足や香ごう、お鈴を置く。お葬式であげる正信げをあげ、お焼香をしてもらい、短念仏、和讃本願力にあいぬれば、御文白骨。…
その人は歌が好きでいろんな人に歌って聞かせたのだと聞いた。法名は釈雅音、阿弥陀経からつけた。「がおん」ではなく「げおん」とよむ。
お骨を墓に納めた。、二時間くらいで全てが終わった。こういうのを骨葬(こつそう)というらしい。正直、驚いた。今回はじめてだったけど、いずれこんなふうに葬儀の形は変わるのかもしれない。音をたてて崩れる思いがした。崩れたものはなにか。