金沢別院報恩講出仕

組長(そちょう・地区が「組(そ)」という名のブロックに分かれている。)から連絡があり、今年の15日は東別院報恩講に当寺が組を代表して参勤する事になった。以前父の代理で参勤したことがあって懐かしい。装束は裳附、五條袈裟、差貫。ちなみに法礼が出る。
懐かしい顔・顔・顔、右も左もわからなくて勢いだけあった生意気な者をあたたかく場に迎えてくれた人たち。20代前半につるんだ仲間たちは、すっかり中堅になっていた。知らない人が三分の一くらい、若手がいっぱいで後継者には困っていないよう。
法会の舞台裏は熱気に溢れる。整った荘厳、整った衣体、整った作法。それでも諸所にミスがあり走り回って汗をかいて頭を下げる姿もあった。
参勤する私たちは荘厳(お飾り)になる。座っているのが仕事で、声は出さない。一見ばかばかしいだろうか。言い捨てるのは簡単だけれど、現場で必死にがんばっている仲間たちがいる。私はどこにいるだろう。

Sさんの変わらない優しい笑顔を見た。○さんが「差貫(袴のようなもの)」を間違えて持って来た。ある人は「これは違うから、つけないで私たちと一緒にお勤めしましょう」と伝えた。○さんは冷や汗をタオルで拭く。すぐ後にSさんが来て、「教務所に差貫があるはずだから借りましょう、大丈夫、まだ時間が充分あるから」と優しく言った。みなすでに装束をつけていて、そう時間はなかった。声をかけられた○さんは冷や汗をタオルで拭いてうなずいた。私もうれしくなってうなずいた。Sさんのジョークはまずいけれど、本当にいつも優しくていつまでもハンサムな人。
帰りしな、私のつけていた装束に「待った」がかかった。位(くらい)がないと着れない衣(ころも)。だいたい自分の位なんて知らないよ!でもこの衣が着たくて位を上げたので縮こまる必要もない。帰り道、「充分着れる位でした。自分の位を覚えておいてくださいね。」と報告の電話がありました。「位って何?」の問いは後回し。位と衣体が合っているかどうか真剣にチェックする機関があるのだから、好きな色を着るのに文句言われない環境は作っておきます。多くは望みません。