「口、チャック。」

先日、従兄夫妻が寺を出たことを聞いた。「母親をぶっ殺してやりたいと思うことがあった。」という。お参りにいったお寺の、私より一つ上のご住職が「(母親の)声を聞くとイラッとする。」と言っていた。私も母に対して腹を立てることが多い。
35歳から40歳くらいの僧侶は、僧侶の年齢としてはまだまだなんだけど、法務や社会的な繋がりなどの仕事を一人前にこなしているのに、親にとっては子どもなんだろうか、寺は同居が多いこともあって「かまわれてうっとうしい」という愚痴をよく聞く。親は60歳代なので、まだパワフルでもある。うちの母の口癖は「負けんよ!(負けないよ)」なんである。亡くなった父が母に対して「口、チャック。」と言っていたが、私から見ても黙っていて欲しいことがよくある。


長い間家族に口をきいてもらえない、挨拶すらしてもらえない「かわいそうな」人の話を聞いた。口をきいてもらえなくなる過程があったのだろうなぁと思う。私もしょっちゅう口をきかない冷戦に入るが、その話を聞いてから我慢するようにしている。


口をきいてもらえない、誰からも話しかけられることがない、声が届かない世界を「地獄」というと、竹中先生が言っていた。