あんただれや

祖母は今年九月からオムツをしている。オムツをしてからあまり日が経たないうちに私が誰だかわからなくなって、部屋へ行けば「あんただれや」を繰り返す。

もともと何時も自己アピールが意欲的でない私は、敢えて名のることなくオムツや食事の介助をしているが、そのことについて母にせせら笑われ、いきづまってしまう。

祖母が覚えているのは母、私の妹、妹の子どもたち。祖父のことは覚えているだろうか。同居している私の娘の名前は知らない、かわいがっていた犬を「ちん○たん」と呼んでいたが同じように呼ぶ。

「母親がうら(自分)のことを、あんただれやというんや(いうよ)」と言っていた人の気持ちが、同じ立場になってようやくわかる。祖母にかわいがってもらったことを想えば、忘れ去られてしまった自分が悔やまれる。とはいえ、思い出してもらおうとか覚えてもらおうとも思えず、むしろ「恩返し」なんて生ぬるい感覚がとおらない現場で、自分が出来ることをやれればそれでいいと思う。(ちょっといじけてるかな?)