転校生に届いた菅総理大臣からの手紙

四月、小さな小学校に転校生がやってきた。娘は一人増えたと喜んだ。でも始業式も次の日も次の日も学校に来ることがなかった。心が疲れていて、登校することができないのではないかと思って心配した。
月曜日、新しい仲間と共に過ごす時間が始まった。仲良くしてあげてね、今日は何して遊んだ?困っていたら声をかけてあげてね。
転校生の彼女を最初に泣かせたのは菅総理大臣からの手紙だった。うれしくて泣いてたの?と娘に聞いたら悲しくて泣いていたように感じたのだという。同クラスのRちゃんにも聞いてみた。「思い出して悲しくなって泣いたのだと思うよ」といった。
娘は「だいじょうぶ?」とそっと声をかけた。彼女はこっくりうなずいたのだという。
手紙はクラス全員に配布された。その手紙を喜んでいる方もおられる。だけど、傷ついて泣いた子がいる。

(漢字にはすべてふりがな)
新学期を迎えるみなさんへ


みなさん、入学、進級おめでとうございます。
この4月から、また新しいお友達をたくさん作ってください。


みなさんは、この4月、希望に満ちた春を迎えるはずでした。
しかし、この春は、私たちにとって、とてもつらい春になってしまいました。
ご存じのように、3月11日、あの大地震津波が日本をおそったのです。
みなさんの中にも、ご家族を亡くされたり、あるいはいまも避難所から学校に通ったりしている人もいる事でしょう。
避難所の中では、みなさんお手伝いをしたり、お年寄りや身体の不自由な人を助けて、掃除をしたり、
食事の準備をしたりしてくれているいう話をたくさん聞きました。本当にありがとう。
 いま、みなさんは、すべての悲しみや不安から逃れることはできないかもしれません。でも、みなさんは、けっして一人ではありません。どうか、先生やお友達と助け合って、一日も早く、みんなが楽しく安心して学び、遊べる学校を取り戻しましょう。私たちも全力で、みなさんと一緒にがんばります。


災害にあわなかった地域の児童のみなさんにも、お願いがあります。
どうか、みなさんの学校にやってくる、避難してきた仲間たちを温かく迎えてあげて下さい。
すぐ近くに、そういったお友達がいなくても、遠く離れて不自由な生活をしている子どもたち、あるいは、この震災で亡くなり、進学、進級を果たせなかった子どもたちのことも 同じ仲間だと思って、祈りとはげましの声をあげてください。
小さなみなさんも、節電をしたり、おこづかいを貯めて募金をしたりしてくれているという話もたくさん聞きました。そして、私たちはとても誇らしい気持ちになりました。みなさんのそういう思いやりがあれば、日本はきっと、もっと素晴らしい国になって、もう一度立ち上がります。


もっとも被害の大きかった東北地方にも、もうすぐ春が訪れます。
みなさんは「桜前線」という言葉を、先生からもう習いましたか? 桜の花が開く日を線で結んだものです。
日本の国土は縦に細長いために、沖縄では例年1月上旬に開花宣言が行われ、その桜前線は、約半年をかけて、5月の下旬に北海道の北端に到達します。
自然がおりなす、素晴らしい命のリレーです。
自然は今回の地震津波のように、時に私たちに厳しい試練を与えます。しかし桜前線のように、私たちをやさしく包んでくれるのも、また自然の力です。


みなさんも、どうか、思いやりのリレーのバトンを、被害を受けた地域の仲間に届けてください。電車の中でお年寄りに席を譲ること、身体の不自由な方の手助けをすること。そうした身近な人への思いやりが、きっと少しずつ広がって、桜前線と一緒に、被災地に届く事でしょう。
この思いやりのバトンは、世界中からも届けられました。世界中から、救助の人が来てくれたり、支援の品が届けられたりしました。みなさんも、たくさん勉強して、今度は、このバトンを世界中の困っている人たちに返してあげられるような大人になってください。
原子力発電所の事故に対して、危険をかえりみずに立ち向かう消防士さんや自衛官、電力会社の人たちの姿。各地の被災地で救命救急活動に当たった警察官やお医者さん、看護師さん、そして何より本当に命がけでみなさんを守ってくれた学校の先生たちの姿を忘れないでください。みなさんも、もっと身体を鍛え、判断力を養い、やさしい心を育んで、他人のために働ける人になってください。


私たちも、全国の学校の先生方も、みなさんが笑顔で登校できるように、全力でみなさんを支えます。日本の未来は、みなさんにかかっています。みなさんの明るい笑顔で、日本を元気にしてください。

                   内閣総理大臣  菅 直人
                   文部科学大臣  高木 義明

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